長岡戦災資料館での聞き取りの様子(2022年)

コンセプト


戦後77年、当時の記憶が失われていっています。日本の場合、多くの地域で空襲被害はよく記録されている反面、特に象徴的な戦争体験を持たない地域では「語り継ぐほどのエピソードがない」として、戦時の記憶が振り返られてこなかった結果、子どもたちはまるで「わたしの町には戦争なんてなかった」ように感じている…という場所もあるのではないでしょうか。象徴的な戦争体験以外の記憶は、継承が後回しにされてきた側面もあるのではないでしょうか。目立った出来事がなかったとしても、当時、全てのひとが少なからず戦争の影響を受けたはずです。それが伝わってこそ、戦争は他人事ではないという意識を強くできると考えます。


わたし達はしばしば、戦争体験をカテゴライズしてしまいますが、1人のひとが体験した戦時中の出来事は、様々なトピックに跨っています。例えば、父が出征して戦地にいる間、内地にいる家族が空襲に遭った場合、その「家族の戦争の記憶」は、出征だけでも空襲だけでもなく、その両方です。


さて、新たに地域の戦争の記憶を掘り起こそうと思っても、どこに着目して始めればいいか浮かばないことが最初のハードルになったとき、「出征兵士に関する記憶」がきっかけになりうると考えました。なぜなら、全国どの地域からも、きっと誰かが出征したからです。


残念なことに、出征兵士当事者である方は、年齢的にもう語れない方も多いです。そこで本プロジェクトでは、「出征兵士の家族」からも、父や兄弟が戦争に行ったときの様子や、受け継いだ戦地での体験などを聞くことで、出征兵士当事者とその家族それぞれにとって、戦争に行くってどういうことだったのかを捉えようとしています。


その最初のフィールドとして新潟県長岡市を選んだ主な理由は、戊辰戦争と⻑岡空襲で2度の復興を経験し、地域の歴史継承の土台があること。なにより、姉妹都市のホノルル市との平和交流など、当地の空襲被害に留まらない多角的な視点から歴史を捉え、「⻑岡から平和を発信しよう」という想いが根ざず地域であることです。


うして得たエピソードを継承する手段として今回は、デジタルマップとストーリーテリングで構成するデジタルアーカイブを選びました。出征兵士の足どりを地図上に描き、その地点でのエピソードをみられるようにすることで、「兵士になって、戦争に行かねばならなかった」当時の状況を、想像しやすくできると考えたからです。


そして、長岡からだけでなく、他の地域でも、誰もが地域の戦争の記憶の継承に取り組めたら…という思いで、このデジタルアーカイブは誰でも真似できる方法で作りました。これまでデジタルアーカイブの制作には、デジタルスキルを持つ人材が必要でした。本プロジェクトでは、地域の戦争の記憶の継承のモデルとなることを企図し、ノーコード(プログラミングなし)でデジタルアーカイブを制作可能なプラットフォーム・Arc GIS Onlineを利用しています。

(三上尚美)

サイトについて

本サイトでは、「出征兵士の足どり─新潟県長岡市から─」デジタルアーカイブ(以降「本コンテンツ」)を公開します。

 

本コンテンツは、東京大学大学院学際情報学府の修士研究「出征兵士の足どりデジタルアーカイブ─地元の戦争の記憶の掘り起こしと継承のアクションリサーチ─」の成果として構築 / 公開するものです。地図上の座標など、不明確な箇所・瑕疵を含む可能性があることをご理解のうえご利用ください。


※コンテンツの表示には大量のデータ通信を行うため、Wi-fi環境でのご利用を推奨します。

(サイト最終更新日:2023年2月14日)

『出征兵士の足どり ─新潟県長岡市から─』デジタルアーカイブ 

著作 三上尚美

運営 東京大学大学院 渡邉英徳研究室

協力 長岡戦災資料館

   長岡市立中央図書館文書資料室

インタビュイー(掲載順、敬称略)

樋口義雄、清水誠一、安達武男、斎藤統一、ご家族のみなさま

研究費

科学研究費助成金 基盤研究(B)「戦前・戦中の報道写真を用いたストーリーテリング・デジタルアーカイブのデザイン

 

本コンテンツについては今後改善を施し、内容・データを変更する場合があります。

公開日:2022年12月8日(最終更新日:2022年12月8日)

ウェブサイト

制作 三上尚美

協力 原田真喜子、金甫榮

運営 東京大学大学院 渡邉英徳研究室 

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